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光線サンプリング面を用いたホログラム計算


電子的なホログラフィック3Dディスプレイを実現するためには、3次元のデジタル情報から光の波動としての性質を考慮した伝搬と干渉のシミュレーションを行い、ホログラムのパターンを計算しなければなりません。従来のホログラム計算は、多数の点光源からの球面波を合成して計算する方法などの波面伝搬に基づく方法と、光線追跡に基づく幾何光学的な方法に分けられます。波面情報に基づく計算手法では隠面消去や光沢の表現などに限界がありました。一方、光線情報に基づくホログラム計算法の場合は、既存のコンピュータグラフィックスの手法を応用できるためリアリティーの高い立体映像の表現が可能です。しかしながら、光線情報に基づく方法の本質的な制約として、幾何光学近似によって分解能が低下するという性質があるため、ホログラフィーの優位性を生かすことができなくなってしまいます。これに対して本研究では、光線情報と波面情報を相互に変換する手法を原理面から明らかにし、これを適切に応用することで奥行きの深いシーンを高リアリティーで再生可能であることを実証しました。

この方法のポイントは、光線追跡などのコンピュータグラフィックスの手法を用いて計算した光線を、物体の近くに設けた「光線サンプリング面(RS面)」でサンプリングする点です。そしてRS面からホログラム面までは波動伝搬の計算を行うことで、幾何光学近似による分解能の低下を視覚的に検出できないレベルに抑えることができます。

さらに、提案したRS面によるホログラム計算法の計算量を削減するために、
Orthographic RS plane(ORS面)を用いた計算方式を提案しました。これによって大規模なホログラム計算を行えるようになり、波面に基づく計算方法難しい映像表現、例えば、金属やダイヤモンドのような光沢の表現、布地の質感、液体を含む透明物体による光の屈折などが可能になりました。図にORS面を用いて計算したホログラムの再生像の例を示します(ホログラムの出力は関大デジタルホロスタジオとの共同研究により行いました)。

発表文献など